その1からその4まで、一回のお願いで返ってくるものを見てきました。この記事は、今回の分の締めくくりとして、お願いを二回つなぐ話です。このサイトのトピックコーナーの第1回、成年後見制度の改正の解説は、二本のお願いだけでできています。一本目で材料を作らせ、二本目でその材料の使いみちを言う。それだけです。
うまくいった頼み方を、そのときの文面と、返ってきたものごと一つずつ並べる特集です。これがその5。
- その1 答えは、動く図でください ― 「図(HTMLが良い)」の一言
- その2 研修資料を、押すと答えが出るクイズに
- その3 利用者向けの手順を、紙芝居に
- その4 お知らせを、A4一枚の掲示物に ― 一回目ははみ出した
- その5 nest-newsのトピックコーナーの成年後見制度改正の解説ができるまで ― お願いの合わせ技
成年後見の法律が大きく変わると聞いて、ホームページで解説したいんです。でも「調べて、分かりやすく、条文も比べて、記事にして」を一度に頼んだら、どれも薄くなりそうで。
それなら、二回に分けてください。一回目は調べて、図と条文の差分にまとめるところまで。返ってきたものを見て、納得したら、それを私に渡して「これを使って記事に」。材料と用途を分けると、どちらも濃くなります。
一本目のお願い(そのまま)
これだけです。相手は、Web を検索できる AI です。「調査して」と言ったので、AI は法務省の公表資料を探しに行き、「図を駆使」と言ったので図を描き、「条文の差分」と言ったので新旧の条文を並べました。返ってきたのは、一枚の HTML でした。
中身は、全体像の図、権限の組み立ての図、利用期間の比較の図、施行時の経過措置の分岐図の四つと、改正後と現行の条文を左右に並べた新旧対照。脚注には法務省の資料の出典が書かれています。ここで一度、止まります。 返ってきたものを読み、条文を確かめ、納得してから、次へ進みます。
二本目のお願い(そのまま)
一本目の返事を、ファイルとして保存しておきます。それを二本目のお願いに添付します。
返ってきたのが、いま公開されているトピック記事です。一本目の図と条文の差分が、サイトの記事の形に組み直されています。
このサイトの場合、二本目の相手はサイトの中身を直接書ける AIでした(相棒編で紹介した使い方です)。そこまでしなくても、この型は使えます。二本目を「これを使って、家族向けの回覧文にして」「これを使って、職員研修の資料にして」「これを使って、A4一枚の掲示物にして」と言い換えれば、ふつうのチャットで同じことができます。
どこが効いたのか ― 二本の依頼文の解剖
一本目は、材料を作らせる文です。
この一言で、AI は自分の記憶で答えるのをやめ、外へ探しに行きます。法律の改正のように、AI の記憶より新しいことを聞くときは、必ずこれを言ってください。言わなければ、AI は古い知識で堂々と答えます。
読む人(一般人)と、手段(図)を言っています。図の四つは、ここから出ています。
ここが一本目の主役です。「分かりやすく説明して」だけなら、AI の言葉による要約が返ってきます。それでは確かめようがない。「条文の差分」と言ったので、改正後と現行の条文が左右に並び、どこが変わったかを原文で追えるようになりました。分かりやすさと、確かめやすさを、両方頼んでいます。
二本目は、用途を言う文です。
置き場所と役割を言っています。「記事にして」だけなら、どこにでも載りそうな文章が返ってきます。「新設するコーナーの第1回」と言ったので、コーナーの説明から始まる記事になりました。
二本目の主役です。一本目の返事を、そのまま材料として渡しています。 これがないと、AI は二本目でもう一度、一から調べて考え直します。同じ結論になる保証はありません。「それを使って」と言うことで、一本目で確かめた中身が、そのまま記事の土台になります。
なぜ、二回に分けるのか
一度に頼むと、AI は「調べる・図にする・条文を比べる・記事にする」を一息でやろうとして、どれも浅くなります。二回に分けると、一回目の返事を読んで、確かめて、納得する時間が、あいだに入ります。合わせ技の要は、AI の技ではなく、この「あいだ」です。
この記事の元になった一本目の返事は、条文を一つずつ、法務省の新旧対照条文と突き合わせて確かめてから、二本目に渡されています。AI が出した条文は、材料です。材料の検品は、人の仕事です。法律や制度の話では、ここを省かないでください。
向く話、向かない話
- 向く — 法律や制度の改正、新しいサービスの仕組み、複数の資料にまたがる説明。つまり「調べる」と「まとめる」が両方要る話。
- 向かない — 一本で済む短い話。調べる必要のない、手元の資料だけで完結する話(その2のクイズがそうです)。
注意
- 「調査して」の返事は、出典を見る。 一本目の返事の脚注に出典があるか。なければ「出典を付けて」と頼む。
- 法律・制度は、原典で確かめる。 条文は e-Gov 法令検索、改正の内容は所管省庁のページ。AI の新旧対照は、確かめるための入口であって、答えではありません。
- 数字と日付は、いつ時点かを見る。 利用者数や施行の予定は、時点で変わります。一本目の返事に「◯年◯月末時点」と書かれているか。
- 二本目に渡すのは、確かめた後。 納得していない材料を渡すと、間違いがそのまま記事になります。
こんな風に応用できます
型はこうです。一本目:調査して → 相手と見せ方 → 根拠の出し方。(読んで、確かめる。)二本目:どこに、どういう位置づけで → 材料を添付して「それを使って」。
一本目で材料、二本目で用途。あいだに、人の目。今回の分の締めくくりは、この三つです。